研究系及び研究施設の現状 79
森 田 紀 夫(助教授)
A -1)専門領域:レーザー分光学、量子エレクトロニクス
A -2)研究課題:
a) ヘリウム原子のレーザー冷却・トラップの研究 b)液体ヘリウム中の原子・イオンのレーザー分光
A -3)研究活動の概略と主な成果
a) ヘリウム原子のレーザー冷却・トラップの研究:レーザートラップ可能な最も軽い原子であるへリウム原子を対象 として,レーザー冷却・トラップの研究を行なっている。本年はヘリウム原子気体のボーズ・アインシュタイン凝縮 の実現に向けて、よりいっそう多くのヘリウム原子をより低温で蓄積することを目的とした装置の設計・製作に全 力を注いだ。本装置による来年以降の成果が期待される。
b)液体ヘリウム中の原子・イオンのレーザー分光:液体ヘリウム中に置かれた原子やイオンは泡や氷球を作ってその 中に納まっていると考えられるが,それらの原子やイオンのスペクトルを測定することによって泡や氷球の状態さ らには液体ヘリウムそのものの性質を微視的に調べることが出来る。本年は,液体ヘリウム-3中のマグネシウム原 子およびカルシウム原子のスペクトルと液体ヘリウム-4中におけるそれらの原子のスペクトルに観測された大き な違いの原因についてより詳しい理論的な解析を行った。また、前年までに行ったイッテルビウムイオンの実験結 果に触発され、気相のカルシウムイオンとストロンチウムイオンについてヘリウム原子との衝突における超微細構 造間の遷移断面積を実験的に求めると同時に理論的な解析を行った。
B -1) 学術論文
M. KUMAKURA and N. MORITA, “Magneto-optical trap of metastable helium-3 atoms,” Appl. Phys. B 70, 555 (2000). Y. MORIWAKI and N. MORITA, “Laser spectroscopic measurements of fine structure changing cross sections of Ca+ and Sr+ ions in collisions with He atoms,” J. Phys. B 33, 5099 (2000).
Y. MORIWAKI and N. MORITA, “Spectroscopic studies on Yb+ ions in liquid helium,” Eur. Phys. J. D 13, 11 (2001).
B -5) 受賞、表彰
森田紀夫 , 松尾学術賞(1998).
B -6) 学会および社会的活動 学協会役員、委員
応用物理学会量子エレクトロニクス研究会幹事(1984-87).
80 研究系及び研究施設の現状 C ) 研究活動の課題と展望
ヘリウム原子のレーザー冷却・トラップについては,トラップ原子数の増加に対して大きな妨げとなるペニングイオン化および 会合イオン化についての重要な知見が得られたので,それを基にして新たな装置を製作してトラップ原子数の飛躍的な増 加を図り,準安定ヘリウム原子気体におけるボーズ凝縮の実現を目指したい。液体ヘリウム中の原子・イオンのレーザー分 光については,実験装置や測定系の改良によってさらに多くの種類の原子やイオンに対する観測を進めて行きたい。特にイ オンに関しては,超流動液体ヘリウム中のRFイオントラップを実現し,イオン種の選択的観測を行うとともに,イオンの寿命を 延ばすことを考えている。